SHIBUYA109 lab.

【東大研究員×フリュー×
SHIBUYA109 lab.連載企画】

プリ帳HISTORY

「プリ帳」からガールズカルチャー史をひも解く本連載。第1回目のゲストは、プリ機開発に携わる稲垣涼子さんにお越しいただきました。

毎回ゲストを迎えて「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。“盛り”を研究する久保友香先生。誕生以来若い子たちを魅了し、その青春を写し出してきたプリントシール機シェアNo.1の株式会社フリュー。そして長年若者の流行を見続けてきたSHIBUYA109の視点をかけ合わせることで、各世代のプリ帳を考察していきます。

第1回のゲストは、プリ機開発に携わる稲垣涼子さんです。

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INDEX 目次

1 ゲストの「プリ履歴書」

【今回の研究メンバーはこの3人】

久保友香先生

久保友香先生

東京大学大学院にてシンデレラテクノロジーを研究

稲垣涼子さん

稲垣涼子さん

「ガールズトレンド研究所」で所長を務める

長田麻衣

長田麻衣

「SHIBUYA109lab.」で所長を務める

今回は第1回目ということで、プリを知り尽くす「ガールズトレンド研究所」所長の稲垣涼子さん(38)をゲストにお迎えし、プリ帳から当時のガールズカルチャーを紐解きます。
プリが誕生した1995年は中学3年生だった稲垣さんに、高校生時代の思い出がどっさり詰まった貴重なプリ帳を見せてもらいました。

2 プリは「友達の証」。
プリ帳を見て交友関係を把握していた

久保友香先生 そもそもプリ(プリントシール機の略。以下「プリ」と表記)は、1995年に誕生したのですが、初めは全然流行らなくて、95年の後半で盛り上がったんですよね。本格的にブームが起こったのは96 年なので、稲垣さんはちょうど中3から高1にあがるときですね。

稲垣涼子さん たくさん撮り始めたのは高1ですね。初めて撮ったのは中3のときですけど、それは残っていないんです…。

長田麻衣 例えば中学から高校にあがるときに「プリが友達づくりに役立った」というようなことはありましたか?

稲垣涼子さん ありましたね。当時「プリを撮る=仲がいい子」「仲良いならプリ撮らなあかん!」みたいな感じもある一方で、初めましてだけど「プリ撮る?」という流れから撮ったら仲良くなった気がする、みたいな。

久保友香先生 やはり学校とかでも、プリ帳は見せ合っていましたか?

稲垣涼子さん 当時はみんなプリ帳を作っていたから、暇になったら「プリ帳みせて?」と見せ合っていましたね。例えば私のプリ帳を見た友達が、私と誰かが写っているプリを見て「あーこのふたり遊んだんだ!」って、友達が増えている情報をプリを通して共有したり、一緒に写ってはいないけど「交換している=友達になったんだな」っていう解釈をしたり、ある意味、交友関係を知るツールになっていました。

3 性格が出る!?
とにかくキレイに貼ることにこだわっていたプリ帳

久保友香先生 みんないろいろなものを「プリ帳」にしていたと思うんですけど、なぜそのスタイルにしたんですか?

稲垣涼子さん 正直あんまり覚えていなくて…。最初にこのスタイルではじめてしまったから、キレイに貼るシステムで貫き通したって感じですね。ただ、仕事で作る資料とかも文章や図形の位置が微妙にずれているのがすごく気になるタイプなので(笑)。プリ帳ってそういう性格が表れるのかも。

久保友香先生 (プリ帳を見ながら)ここからが96年ですかね。客観的に見ると、プリのフレームに「おでん」とか「ゆきだるま」とか季節感のあるものが採用されているので、いつが冬なのか春なのかとかわかりますね(笑)。

稲垣涼子さん 確かに!そう思って見てなかったけど…フレームで時期や年代が分かりますね。おもしろい!

4 月に約3,000台出るほどのプリブーム!
“裏ワザ”ができたプリ機も

久保友香先生 本格的にプリが盛り上がった96年は、月3,000台くらい新機種を出していたそうですよ。

長田麻衣 すごい!今みたいに、プリ機が1箇所にたくさん置いてある感じではなかったですか?

久保友香先生 プリ=ゲーセンっていう概念じゃなかったですよね。

稲垣涼子さん あちこちにポツポツある感じ。今でいう証明写真の機械みたいな感じですね。
プリ機の中には “裏技”ができる機種もあって、例えば、この4分割のプリは確か“裏技”でやったはず…! ゲームの裏技みたいな感じで「上上右右下下!」「決定!」のように、レバーとボタンの組み合わせでできたんです。16連写で撮影できるという裏技もあって。やるのはいいんですけど、連写が結構な速さで、撮影中ずっと爆笑していましたね。

久保友香先生 裏技とか、人と違うものを求めるあたりが高校生らしいですね!

稲垣涼子さん あとこのプリ。4分割のうち3枚が真っ黒で、何かの文字が背景に書かれているんですが、これたぶん、バグなんですよ!普通嫌じゃないですか。でも当時は「バグってる=レアやレアや!」って喜んでいましたね(笑)。

5 同じ機種でも置き場所によって写りが違う!
いつの時代も“盛れる”プリ機が人気!

久保友香先生 当時、同じプリ機でもお店によって写りが違いましたよね。隣にコカ・コーラの自動販売機があると顔がピンクっぽく写るとか(笑)!

稲垣涼子さん 写りの違い、確かにありましたね! すごく記憶に残っているのが、京都タワーにちょっとシールのサイズも他とは違うそこでしか見かけない"オリジナルプリ"みたいな機種があって「それが盛れる!」ってわざわざ撮りに行ってました。

長田麻衣 「盛れる」って当時はなんて言っていたんですか?

稲垣涼子さん 「写りいいよね」って普通に言っていたと思います(笑)。あっ、このプリも盛れていてお気に入り!

久保友香先生 やっぱり白っぽい写りのものが「盛れる」って感じだったんですかね?

稲垣涼子さん そうですそうです。
プリ帳を見ていて気づいたのですが、自分で「盛れる」と思っているプリ機ではアップで撮ってますね(笑)。

久保友香先生 小麦肌が人気の時期なのに、プリは顔が白く写る=盛れるという…。なんだかそういう心理っておもしろいですね。

6 安室ブーム到来!姉と遊ぶときはちょっと大人ぶって厚底靴を履いていた

稲垣涼子さん ここら辺は97〜98年くらい。こっちが姉ですけど、安室ちゃん風ですよね!リップが濃く、まゆげが細くて黒いみたいな…!

長田麻衣 そのころは、安室奈美恵さんに憧れる「アムラー」に牽引されて茶髪のメッシュヘアやミニスカート、厚底靴がブレイクした時期ですね!SHIBUYA109からは、ルーズソックスや厚底ブーツなどの大ヒット商品が生まれています。ちなみに97年は、SHIBUYA109が「ギャルの館」への改革を本格化し始めたころで、年間売上高トップは、サーフブランドの『me Jane』でした。

稲垣涼子さん このとき私は安室ちゃんがすごく好きってわけではなかったのですが、厚底ブーツ履いていましたね。ただ、日常的にではなく、コスプレ的な感じで姉と遊ぶときなどにそういう格好をしていました。

久保友香先生 稲垣さん、プリ履歴書の“参考にしていた人”に「お姉さん」とありますが。

稲垣涼子さん 姉が2人いて、姉と一緒のときは服装も大人っぽくしているんですよね。ちょっとお姉さんに見られたいとがんばって。2番目の姉にはたまに洋服を借りていました。

久保友香先生 このときの「大人っぽくする」って、具体的にどういう感じでしたか?

稲垣涼子さん メイクがちょっと濃いとか、服装…それこそ厚底ブーツを履くとか。

久保友香先生 服装の系統はどんな感じだったんですか?

稲垣涼子さん パルコ系ですね。古着とかも着ていました。

久保友香先生 カワイイ!! 他の学校とかから人気だったんじゃないですか?

稲垣涼子さん いやいや…そんなことないですが…。でもポケベルの番号が友達から渡って知らない人から連絡がくることとかはありましたね(笑)。

久保友香先生 それってプリをきっかけに知れ渡ってるんですかね? 運動部の県大会で有名とかじゃないですよね?

稲垣涼子さん ぜんぜん! 確かにプリで知られるというのもあったのかもしれないですね。

7 まるでSNOW…時代が変わっても
若者が思う
“かわいい”は同じだった!?

長田麻衣 こうやってプリをみていくと「SNOW」とかに通じるものがありますよね。うさぎの耳がはえてるとか。

久保友香先生 稲垣涼子さん あ~、たしかに!!!

久保友香先生 これはコアラのマーチ、鼻がついてますね!

久保友香先生 稲垣涼子さん 長田麻衣 SNOWぽい!

長田麻衣 でもこれってSNOWのように顔に合わせてくれるんじゃなくて自分から合わせていくってことですよね?

稲垣涼子さん もちろん(笑)。勝手になってくれなくても、自分から合わせにいきますよ!

長田麻衣 自分からいくSNOW(笑)!

久保友香先生 いまの子がこれをみたらどう思うんだろう…。

稲垣涼子さん 一周して新しいと感じるかもしれないですね(笑)!

8 プリ帳は最高の宝物。いまの若い子に伝えたいのは「とにかくプリ帳を作って」ということ

久保友香先生 プリに関して、当時の若者といまの若者の違いってあるのでしょうか?

稲垣涼子さん いまも昔もプリの“本質”は変わってないと思います。ただ、プリを撮る目的が「遊びとしての楽しさ<盛れるかどうか」に変わっているのが一番大きな特徴ですね。いまの若い子がプリの遊びの要素を知らないのはもったいないと思うので、メーカー側の人間として、今後プッシュしていきたいです。

久保友香先生 いまの若者に、「プリをこんなふうに楽しんでほしい」などといった思いはありますか?

稲垣涼子さん 「こんな宝物ありますか?」って思うくらい、プリ帳って貴重な思い出がたくさん詰まっています。だから、いまの若い子たちにも「騙されたと思って、入れるだけでいいからアルバムに入れてみて!」と言いたいですね。将来見返したときに、絶対絶対まとめておいて良かったと思うはずです!

取材・文/高尾ひとみ

PROFILE プロフィール

稲垣 涼子 Ryoko Inagaki

フリュー株式会社 ガールズトレンド研究所所長。
2005年入社以来、プリントシール機の商品企画に携わる。現在は企画部部長としてマネージメントも行う。
趣味は、美味しいもの、漫画、カラオケ、ホットヨガ、ダイビング、脱出ゲーム。なんでも記録するログ癖あり。
今年の目標は、仕事でいろいろ新しいことを仕込んでいるので、世の中により多くのHAPPYをお届けすること。

久保 友香 Yuka Kubo

東京大学大学院情報理工学系研究科・特任研究員。
東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師などを経て、現職。
研究テーマは、日本の女の子の「盛り」の文化と、それを支援する「シンデレラテクノロジー」。好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。

長田 麻衣 Mai Osada

株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab. 所長。
総合マーケティング会社にて、主にメーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。現在は毎月200人のaround20(15歳~24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標は、若者マーケターとしてテレビ番組に出ること、腹筋を割ること。

COMMENT所長から

今回初めての取材でしたが、久しぶりに角が丸いプリを見ることができ、とても懐かしい気持ちになりました!
当時のプリのフレームと現代の写真アプリのフレームが似ているなど、女子たちの「かわいい」「盛れている」と感じるポイントは現在も変わらないようです。

会社概要

会社名 株式会社SHIBUYA109エンタテイメント
TEL 03-3477-6719
FAX 03-3477-6702
本社所在地 〒150-0043
東京都渋谷区道玄坂1丁目10番7号 五島育英会ビル4階

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