毎回ゲストを迎えて「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。
“盛り”を研究する久保友香先生。誕生以来若い子たちを魅了し、その青春を写し出してきたプリントシール機シェアNo.1のフリュー株式会社。そして長年若者の流行を見続けてきたSHIBUYA109の視点をかけ合わせることで、各世代のプリ帳を考察していきます。
第10回目のゲストは、小中の同級生であるフリュー株式会社・広報の門脇彩さんと109ニュース編集部・ライターの小森美沙枝さん!
中学時代バスケ部同士で、よく一緒にプリを撮っていたという2人に当時のプリの話やコミュニティーの話などを伺いました。
東京大学大学院にてシンデレラテクノロジーを研究
「ガールズトレンド研究所」で所長を務める
「SHIBUYA109lab.」で所長を務める
2人とも学生時代は、どこでプリを撮っていましたか?
近所に商業施設があったので、そこのプリコーナーで撮っていました。
プリ帳は作っていましたか?
小学生の時に姉の影響でプリ帳を作ってみたのですが、周りに作っている人がいなかったので、2ページくらいで作るのを止めてしまいました。
私もプリ帳を何回か貼り替えながら作っていたのですが、続かなくて。例えば中学の時は、シール用のノートにこんな感じ(写真上)で隙間を空けて貼っていました。
隙間が絶妙!
基本的にプリは撮ったら財布に入れて、半月くらいためたら缶に移していましたね。あとは、スケジュール帳や付箋のシート(写真下)、鏡、下敷き、定規に貼っていて。下敷きに貼っている人が多かったので、休み時間に「下敷き見せて〜」と見せ合っていました。
私は携帯にも貼っていたんですけど、友達にもらったプリを丸く切り抜いて可愛く貼っていました。
なるほど!プリ帳のように独立したものを作っていたのではなく、普段持っているものに貼っていくスタイルだったのですね!
2003年からプリがデジタルデータで保存できるようになりましたが、保存はしていましたか?
中2から携帯を持ち始めたのですが、データもダウンロードしていました。高1からスマホになって、それから機種を変える度、プリだけは必ず引き継ぐようにしています。
デジタルのプリはどう活用していましたか?
前略プロフィールやmixi、アメーバブログ、CROOZblogにアップしたり!でもmixiのトップ画は自撮りでしたね。
私も自撮りだった!
ガラケーのカメラが進化して自撮りが増えた時代ですよね!ガラケーで自撮りをしていましたか?
はい。当時、ウィルコムの画質の悪い感じが盛れる!と喜んでいました。
画質の悪さで言うと、プリは負けちゃいますね(笑)。
中学のときに、プリをたくさん撮っていますけど、お金はどうしていましたか?
お小遣いですね。あとはお年玉!
私は、お小遣いがなかったので、お母さんにおねだり。でも、なんだかんだ中学の時はバスケ部みんなで撮ることが多かったので、1回100円くらいで済みました。例えば9人だったら2回撮っても1人はタダ!
大人数で撮影して安く済ませるというのは、中学生あるあるですね!
プリの機種は、大人数で撮りやすい「Lumi」が多かったですね。
流行っていたポーズとか落書きはありますか?
中学の時にくみっきーポーズが流行りました!
懐かしい!くみっきーポーズ!
2人のプリを見ると、ペンで輪郭をよく隠していますよね?
それ、すごくやっていました!
輪郭もそうですが、口もがっつり隠していました。
写りが悪くないものも消しているのは、隠した方が可愛く見えるからですか?
はい、盛るためです!口が隠れていた方が盛れる、マスク効果のような感じですね。
消しすぎて片目しか残ってないプリもある(笑)!
例えば2人で撮影したら、片方の人が代表して2人分消していたのですか?
いえ、人のはやらないという暗黙のルールがあって。落書きの前に、まず「これだめ!」「これはOK」と確認して気に入らないところをお互い消してから落書きを始めていました。
そんな暗黙のルールが…!落書きも派手にはあまりしていないですね。
中学の時は字をたくさん書いてごちゃごちゃさせていたのですが、だんだんシンプルになりました。
2011年頃、写りもナチュラル盛りが支持されるようになったと同時に、落書きもコロコロスタンプなどはあまり使われなくなって、ペンを主としたシンプルな落書きがおしゃれだと認識されるようになった印象です。
プリは、何のために撮っていたのですか?
目的というより「とりあえず撮る!」みたいな感じで、遊びの中に組み込まれていました。
私は高校が商業施設の近くにあったので、週4日くらいで行っていて。商業施設に行きプリを撮って、タピオカを飲んでバイトに行って…という生活を送っていました。中学生の後半くらいからは写りなどを気にし始めて、お気に入りの機種もありましたね。
撮る人はいつも一緒だったのですか?
基本的には仲の良いメンバーと撮ってましたが、プリコーナーでたまたま別の友達と会ったら「一緒に撮ろう!」と撮影することもありました。
プリコーナーでしか会わない友達もいましたか?
それでいうと、私たちの場合フードコートが溜まり場でしたね。とりあえず友達の友達は友達!のような感じで。
この時代にもそういうリアルな場を拠点としたコミュニティがあるのですね!2人が住んでいた下町特有なのでしょうか。
フードコートで溜まるというのは、ギャル文化な感じがしますよね。確かに下町って、ギャル文化が残っているイメージがあります。
私たちは団体で遊ぶことが多くて。ちなみに中学時代の男子たちが仲良くて、今でも毎週会ってるんですよ。そこにお互い呼ばれて会う感じです。
BBQや旅行に行ったり、誕生日会に呼ばれたり!Instagramのストーリーとか見ていると、男子たちってほぼ毎週遊んでるよね(笑)。
仲のいい男子は、部活が一緒だったんですか?
男子は野球部なので、違う部活です。当時、男子野球部と女子バスケ部のカップル率が高かったんです(笑)。
美沙枝さんのプリを見ていると、何人いるの?というくらいファッションの系統が変わっていますよね!
変貌がすごい!
もともとRANZUKIモデルのれっちちゃん(伊郷レナさん)が好きで、れっちちゃんが働くSHIBUYA109の「Neon Soda」によく会いに行っていました。写真を撮る目的でそこのブランドの服を買う、みたいな。
ブランドや系統を変える時は、どういう気持ちの変化があったんですか?
「Miauler Mew」というブランドで働く前は、可愛い系の服は一切着ていなかったんですけど、普段自分が着ない服を着てみたいと思った時に、店頭で貸してくれるというので着てみたらハマってしまって。
ちょっとコスプレ感覚?
それもありますね。
友達からしても系統が変わった時「何があったの?」という感じでした(笑)。地元がざわつきましたね。
そのあとは「Swankiss」に可愛い店員さんが多くて、そこへ行きたいなと思って系統を変えました。Swankissを辞める時は、大人っぽい系統になりたいなと思って、今井華ちゃんがプロデュースする「FLOVE」に。FLOVEの時は髪の毛の色やメイクも決まっていたので、自分がこうなりたい!ではなく、決まりに沿っていた感じです。
ファッションの参考は誰だったのですか?
私はあまり人を参考にしたことはなくて、SHIBUYA109をまわって可愛いと思ったものを買って着るスタイルです。「Neon Soda」もれっちちゃんに会いたいから行っていたので。
ブランドにこだわりがないところが、今どきの若者ですね!
門脇さんは、なぜフリューに就職しようと思ったのですか?
専門学校ではオフィスビジネスに関して学んでいたのですが、就活の際になかなか職種を絞れなくて。いろいろ見ていたら「フリュー」という文字を見つけて、その瞬間「あ、プリの会社だ」と気になりました。採用ページをみたら「私この会社で働きたい」と思ったんです!
面接にもプリを持って行ったのですか?
エントリーシートにフリースペースがあったので、そこにプリを貼りました。
プリ志望の子は、たくさん貼ってくれることが多いですね。
その時に他社のプリを貼ると失礼だなと思って「これはフリュー」「これは他社」ってプリを別の缶に分けました。(※写真手前がフリュー、奥が他社機で撮影したプリ)
学生時代にプリを撮ってきたことは、やはり仕事に役立っていますか?
広報をしていると、昔の機種のことを聞かれることがあるのですが、自分が習慣的にプリを撮っていたので機能や写りなどが体の中に染み付いているというか、「あの時撮ったあの機種だ」とすぐ思い出すことができます。そういう意味では今の仕事に活きていますね。
確かに、0から勉強するのは大変ですもんね。
小中学生という青春時代を共にしたお2人ですが、最後に今の学生にアドバイスはありますか?
今の学生はプリを撮る時に、少人数で盛ることに力を入れていて、あまり大人数でプリを撮っているイメージがないんですよね。私たちは学生時代、大人数でわいわい撮っていたのがすごく楽しかったので、ぜひオススメしたいです!
うん、楽しかった!背景なくなるくらいの人数で撮って、ぜひ思い出に残して欲しいですね。
取材・文/高尾ひとみ
2005年入社以来、プリントシール機の商品企画に携わる。現在は企画部部長としてマネージメントも行う。
趣味は、美味しいもの、漫画、カラオケ、ホットヨガ、ダイビング、脱出ゲーム。なんでも記録するログ癖あり。
今年の目標は、社内の仕組みを整える、社外の方とたくさんお話する、家をキレイに保つこと!
東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師などを経て、現職。
研究テーマは、日本の女の子の「盛り」の文化と、それを支援する「シンデレラテクノロジー」。好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。
総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。
専門学校を卒業後、2017年新卒としてフリュー株式会社に入社。プリのSNS運用や取材対応をメインに広報を担当。
趣味は、旅行、タピオカ、ドライブ。今年の目標は、仕事もプライベートも新しいことに挑戦すること。
109ニュースシブヤ編集部アシスタント。アパレル店員を得て、109ニュースシブヤ編集部アシスタント兼109ニュースライターとなり、トレンド情報を発信している。
好きなものは、辛い物、海鮮、YouTube鑑賞、コスメ探し。今年の目標は初海外で最近はまっている韓国へ旅行に行くこと!!
会社名 | 株式会社SHIBUYA109エンタテイメント |
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FAX | 03-3477-6702 |
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今や若者の間で当たり前になっている「自撮り」ですが、カメラ付き携帯の進化によって普及していきました。
また当時は「写真のフィルター加工」はありませんでしたが、「画質が悪い感じが盛れる」など、今のカメラアプリに繋がるポイントが表れ始めており、女の子の「盛る」の研究は更に加速していたのかもしれません!