毎回ゲストを迎えて、「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。
第20回のゲストは、IT企業に勤務する傍ら、“自撮り女子”としてSNSで人気を誇る、1992年生まれのりょかちさん(27)。関西で青春時代を謳歌したりょかちさんに、当時のプリの目的やこだわりなど、お話を伺いました!
シンデレラテクノロジーを研究
フリュー株式会社・広報
「SHIBUYA109lab.」で所長を務める
無印良品のノートに、プリが綺麗に整理されていますね!
当時雑誌に「プリは無印のノートにこういう風に貼るよ!」ってお手本が載っていたので、その通りにプリ帳を作っていました。
プリ帳の“教科書”は雑誌だったのですね!りょかちさんのプリは、ポーズが豊富で見ていて楽しいのですが、一緒に撮るお友達とはどうやって揃えていたのですか?
この頃(中学時代)「海」や「ジャングル」「学校」などのシチュエーションが選択できるプリ機があって、そのシチュエーションに合わせたポーズでプリを撮るのが流行っていました。「ホラー系」だと、ライトの演出があったり!
2000年頃は、シチュエーション系の背景が人気でしたね!中でも水族館や海の中などのデザインがよく使われていました。自分が水槽や水の中にいるような背景で、魚をつかんでみたり、泳いでみたりシーンに合わせたポーズで撮影してましたね!
私、りょかちさんと同じ世代なのですが、当時流行っていたのを覚えています!撮るとき「日差しが眩しいね!3・2・1!」のような音声も流れていたような…!
そうですそうです!促されるまま、日差しを感じたポーズをしていました(笑)。
変顔プリがたくさんあるのも特徴的ですね!
はい、1回のプリで1〜2枚は変顔をするという暗黙のルールがありました。あの子は全然変顔しないとか、カワイ子ぶっているとか、友達同士で変顔について批評することも(笑)。
何故プリで変顔を撮っていたのですか?
面白い変顔が撮れたら、仲良くなれた気がしたというか、それで関係値を図っていたような気がします。友達が思いっきり変顔をしてくれると「この人、ちゃんと自己開示してくれるんだ!」って。
関係値を図るというのは、すごく共感できます!
変顔はコミュニケーションの物差しなのですね!ご自身が写っていない、友達のプリを見ても関係値を感じることもありましたか?
はい、「この変顔めちゃヤバイね、2人仲良いんだね」って。高校生になるとスマホで写真が撮れるようになりましたが、自撮りで変顔はしなかったので、変顔はプリでしか撮らない恒例行事という立ち位置でした。
今も学生の間では変顔のプリを撮る子は多いです。プリは変顔をしても盛ってくれるので、安心して全力を出せるのかもしれません!また、関係値を図るというのも、変わっていないような気がします。
お金払って撮影するプリで変顔するのは勿体ない気もしますが、お金を払っているのに変顔するところに意味があるのかもしれませんね!
左:中学の友達とのプリ/右:高校の友達とのプリ
中学時代と高校時代では、プリの撮り方に違いはありましたか?
中学時代は面白い子が人気で、プリでも「面白いことをしてやる!」という思いが強かったのですが、高校時代は、都会っ子でお洒落な友達が多かったので「可愛くプリを撮りたい!」という方が優勢になりました。
高校時代に、中学のお友達とプリを撮る際は、どうしていましたか?
中学の友達とは、引き続き面白く撮ることが多かったです。地元には古いプリ機しかなくてそもそも盛れないっていう理由もありましたが(笑)。
プリ機は、2000年前半は「遊び」要素が強く、2005年頃から「盛り」の要素が強くなっていったので、ちょうどその狭間ですね。
プリの交換はしていましたか?
していました。高校で出会った友達の中学時代のプリは、自分の地元では使っていない言葉を使っていたり、お洒落な落書きがされていたり、かなり勉強になりました。
なるほど、高校でのプリ交換によって、地域独自のプリ文化が、交じり合っていったのですね!
「半透明ペンを一番太くすると可愛いな」とか「文字を4段5段入れても可愛いんだ」とか「自分の顔がイケてない時は顔の上に名前を書けばいいんだ」とか…細かいことですけど。
Instagramで「みんなどうやって加工しているんだろう」と探るのと同じ感覚かもしれませんね!
プリで盛るために何か工夫をしていましたか?
私、元々一重でアイプチによって二重になったんです。盛れる機種だとまっすぐ向いて撮っていたんですけど、まだプリの「盛り」に信頼を持てない時は、こうやって(※写真)ちょっと目線を下にして盛っていました。「真っ直ぐ向くともっと目が大きいかも?」という可能性を感じさせる作戦です(笑)。
見る側の想像をコントロールするそんなテクニックが…!りょかちさんの学生時代はちょうどプリ機が目まぐるしく進化しましたが、どの時代のプリ機が好きでしたか?
高3から大学に入る時期、2010年〜2011年頃のものが好きでした。デカ目の時期がちょうどいい!
2010年は顔を大きく写せる正方形プリやカラバリ豊かな柄なし背景など、フリューでも盛りに特化した機種が人気でした。プリ機に搭載されているデカ目機能もこの時期が大きさのピークで、顔から目がはみ出しちゃいそうなくらい(笑)2011年以降はナチュ盛りの時代に移っていきました。
その頃、撮りに行くたびに新しい機種が出ていたので、どれが可愛く撮れるかとかを一生懸命探していました。やっぱりこの頃のプリは可愛いな〜!
りょかちさんの中学→高校→大学の流れと、プリの重点が「遊び」→「盛り」→「ナチュラル盛り」になる流れがピッタリあっている気がします!この世代の人たちのためにプリがあるんじゃないかと思うほど、プリと一緒に成長している感じがしますね。
当時携帯ブログが流行っていましたが、プリをアップすることもありましたか?
はい、高校時代はデコログなどネット中心で、プリ帳は自分が楽しむ用でした。デコログ、まだ残っていますよ!………あっログイン出来た!!
すごい!!
「今日は鎌倉パスタに行きました」とか、他愛もないことをアップしていますね(笑)。
SNSで大人気のりょかちさんですから、ブログでも工夫やこだわりがありましたか?
読む人は、プリ目当てだと思っていたので、毎回あえて最後にプリを載せていました!プリの内容と関係ない時も、最後まで読んでくれてありがとう的な感じで(笑)。
ちゃんと最後までスクロールさせる工夫をしていたのですね!戦略的です!
当時からデジタルツールを使いこなしていたのですね!
デコログが出る前も、中学生だったのですが、モバスペに登録してHTMLを組んで個人HPを作っていました。文字を流すこともできましたよ!
ホームページやブログをやる上で、当時流行っていたことはありますか?
高校のときは、みんな自分のマークを1人1つ持っていて、ホームページ上で使うのが流行っていました。私は「花」で、友達は「カタツムリ」とか「ペンギン」とか。
『今日は【花】と遊んだよ!』とか?
そうです、ブログだけを見ると誰と遊んだか分からないんですけど、自分たちは分かるという使い方も。
えっ!私の周りにはその文化はありませんでした。AbemaTVの『オオカミちゃんには騙されない』でも、メンバーの絵文字が決まってみんなコメント欄とかで使っていましたよね!
YouTuberのファンの子が、自分のTwitterアカウントの後ろにYouTuberを示す絵文字をつけているのもよく見ます!その先駆けですね!
地名をローマ字2文字で略したり、とにかく記号化!自分達だけにしか分からないというのが大好きで、そういうことに一生懸命でした。
大学生になってからもプリは撮っていましたか?
撮っていましたが、だいぶ減りましたね。高校生の時は、いい意味で遊ぶことがイベントだったのですが、大学はeveryday遊べるので、遊ぶことに対して特別感がなくなり…だからプリも撮らなくなっていったのだと思います。
学生時代の経験が、今のお仕事に繋がっていると感じることはありますか?
今も昔も若者は、仲間と繋がりたい・分かり合いたい・思い出を残したい、こういった基本的なマインドは同じだと思うんです。自分も学生時代色々やってきたからこそ、そこに共感できていると思うので、仕事でコミュニケーションツールなどを作っていますが、活かされていると思います。
最後に、りょかちさんにとってプリとはどのような存在ですか?
めっちゃこだわりや文化が詰まっているものですね。自分のこだわりだけじゃなくて、友達みんなで形成したこだわりも。今回プリ帳を改めて見て、当時のことを鮮明に思い出すことができました!
東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。
専門学校を卒業後、2017年新卒としてフリュー株式会社に入社。広報として、プリに関する最新情報や魅力を発信中。
好きなものは、旅行、焼肉、ドライブ。
今年の目標は、仕事もプライベートも新しいことに挑戦すること。
総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。
1992年生まれ。学生時代より各種ウェブメディアで執筆。新卒でIT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発・マーケティングに従事。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆する。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎刊)。その他、朝日新聞、Agenda noteなどで連載。
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