毎回ゲストを迎えて、「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。
第22回のゲストは、オンライン英会話サービスを提供する「株式会社レアジョブ」の広報・荒川佳織さん(30)。平成元年生まれで、学生時代、いろいろなものがデジタル化していく過程を見てきた荒川さんに、当時のプリ事情からネット事情まで、たっぷりお話を伺いました!
シンデレラテクノロジーを研究
フリュー株式会社・広報
「SHIBUYA109lab.」で所長を務める
プリ帳は無印良品のものを使っていますが、なぜ無印のものを使うようになったのですか?
小学生の頃、当時流行っていた手帳サイズのシール帳にプリを貼っていたのですが、中学生になると、使っていたものが小学生っぽくてダサいと思うようになり、友達や雑誌の影響もあって、無印のものに変えました。
無印には、少し大人な印象があったのですね!プリの貼り方が、敷き詰めタイプからコラージュタイプに変わるというパターンは、荒川さんの世代によく見られて、我々は「コラージュ世代」と呼んでいます。
(参照:【シンデレラテクノロジー研究者×フリュー×SHIBUYA109 lab.連載企画】プリ帳HISTORY 第18回)
コラージュするようになったきっかけは何でしたか?
敷き詰めるだけだとつまらないなと思って。あと、中2〜3くらいから、携帯電話の待ち受け画像を作るのにハマったんです。歌詞を書いたりキャラクターをコラージュしたり、画像を組み合わせることが大好きで、プリ帳もコラージュするようになったんだと思います。
コラージュタイプのプリ帳の後、プリ帳を作らなくなるケースが多いのですが、また敷き詰めタイプに戻ってプリ帳を作っているのが興味深いです!
コラージュのプリ帳は作るのが結構大変で…。徐々にまとめる時間もなくなってきて、高2の時から敷き詰めタイプに戻しました。最終的に、プリ帳は大学一年生頃まで作っていましたね。最後は簡易的なものでしたが。
コラージュタイプのプリ帳は、プリの落書きもコラージュの仕方もすごく見応えがあります!
落書きは、上手な友達や雑誌『Hana*chu(ハナチュー)』に載っていたものを参考にしていた気がします。
プリ交換はしていましたか?
していました!このページは友達から貰ったのを集めたページです。(※写真上)
「エンドロール」って貰った子の名前一覧が書いてありますね(笑)!演出がステキです!
プリやプリ帳に「ちゃん」を「©️」と書いたり、「ラブラブ」を「ラブ×2」とか「ラブ②」とか書いていたり、手書きの世界が面白いです。(※写真下)「中②」や「○笑」(※丸で囲った「笑」)とかもあって、丸で囲んで強調しているものが多い印象です。
懐かしい(笑)!めちゃ書いていました!
伸ばし棒を「→」にしたりするのも当時流行っていましたよね!今の若者はシンプルな加工がトレンドだからか、このように文字をアレンジしているのは見ないですね。この時代特有のトレンドなのかもしれません。
荒川さんが中高生を過ごした2000年代は、ガラケーを使ったHP制作やブログの情報発信などが盛んな時代でしたが、何かやっていましたか?
初めてWEBサイトを作ったのは中1の時で、テンプレートが決まっている簡単なものから始めました。
それにしても中1からって早いですね!
父親の仕事の関係で、幼少の頃から家にパソコンがある環境だったので。中3の頃やっていたキラキラサイトでは、素材屋さんのようなこともやっていました。作ったアイコンや壁紙を公開して「無料で使ってください」って。
ガラケーだけでなく、パソコンも活用をしていたのですね!素材公開をするモチベーションは何だったのですか?
自分が作ったデザインに対して「トップページ可愛いね」というコメントされるのが嬉しかったのと、ランキングが上がることもモチベーションでした。数回、女性素材サイトランキングで1位をとったこともあります。
キラキラサイトは、学校の友達とやっていたのですか?
キラキラサイトは基本的にパソコンでしか見られなく、学校の友達でインターネットをたくさん使っている人はあまりいなかったので、共有はしていませんでした。顔出しをして友達用にガラケーでやっていたのは「前略プロフィール」やケータイのWEBサイトですね!
ガラケーのコンテンツではリアル友達と交流し、パソコンのコンテンツではネット上での友達と交流するというように、その頃からいくつかの自分を持っていたのですね!
確かにそうですね。ネット上で出会った人と文通したりリアルな友達になることはありましたけど。
ネットの友達と文通…!? 展開がスゴイです!
2回撮影して合成することができるプリが当時のお気に入り!
なぜネットで出会った人と、あえて時間もお金もかかる文通をすることになったのですか?
「プリを交換したい」というのが最初のきっかけでした。ネットで知り合った人に、住所や本名も教えて文通するのって結構ハードルが高いことなので、より仲が深まった感じがしていましたね。
今の若者も、好きなアーティストが同じ人とSNSで知り合って実際に遊んだりしている子が多いですが、荒川さんは何が通じ合って文通に至ったのですか?
私も音楽の趣味が合う子とかは、仲良くなると実際に会ったりしましたね。今でも繋がりのある一番仲良くなった子は、境遇が似ていたんです。中高一貫の女子校、そして当時は女子でインターネットを使っている子があまりいなかったので、ネットの世界に興味があるというのも大きな共通点でした。
なるほど!今ではみんながネット好きのようなものなので、ネット好きが特殊な共通の趣味になるのってこの頃ならではですね!
素材集など作っていた経験から、将来デザイナーに進もうとは思わなかったのですか?
デザイナーを目指してグラフィックやWEBデザインの勉強をしたこともありました。でも中2の頃からプリのモニターなど、いろいろな会社と商品開発をしていくうちに、マーケティングにも興味が出てきたんです。天秤にかけた結果、大学はマーケティングを学ぶ学部を選びました。
当時やっていたことは、今の仕事にも活きていますか?
今は広報なので、メインの仕事は少し種類が違いますが、外部で運営しているコミュニティのイベントのバナーや制作物は自分で作っちゃったりしますね。
すごい!
あと最近は、旦那さんと旅行へ行く度に一眼レフのカメラで写真を撮って、フォトアルバムを作っています。完全に自己満ですが。
そういう〆切がない作業って後回しにしてしまいがちななか、きちんと完成させているのはすごいです。
正直、最近は撮ったら満足して、レイアウトなど旦那さんに丸投げしています(笑)。実は細かい作業が苦手なので、きれいに形にしてくれる人がいるとありがたいんですよね…!旦那さんは設計のお仕事をしているので、使えるんです!
いい“スタッフさん”が近くにいるのですね!
あ、使えるって「ソフトを」ですよ(笑)!
今の若者は、デジタルが中心でプリ帳もあまり作っていませんが、その世代の方たちにアドバイスなど伝えたいことはありますか?
最近フォトアルバムや旅行行ったら動画作ったりしていて、改めて「思い出をまとめること」って記憶にも残るしいいなって思っています。なので、写真などデータ単体としてどんどん残していくのもいいですが、何かしら「まとめること」をオススメしたいですね。
プリを撮る目的も「盛る」より、まとめて残す「作品作り」という感じでしょうか。
そうですね。プリは私にとって「アウトプットツール」でもあり「遊び」でもあり「コミュニケーションツール」でもありました。プリ帳を見せ合うのもそうですが、「プリ撮りに行こう」は大人でいう「飲みに行こう」と同じで、大切なコミュニケーションの一つで。今は完全に「飲みに行こう」ですけど(笑)。
最後に、プリを撮っていた学生時代を振り返ってどうですか?
学生の頃はプリに時間とお金を相当費やしていて、よくやっていたなって思います。でも、やっていたからこそ将来のやりたいことが見つかった気がするので、すごく重要なことだったのだなと思いますね!
東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。
専門学校を卒業後、2017年新卒としてフリュー株式会社に入社。広報として、プリに関する最新情報や魅力を発信中。
好きなものは、旅行、焼肉、ドライブ。
今年の目標は、仕事もプライベートも新しいことに挑戦すること。
総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。
平成元年生まれ。株式会社レアジョブ 広報。
中学時代からのモニターや企業との商品開発などの経験から、“トレンド”を生み出す仕事に興味を持ち、明治大学商学部でマーケティングを専攻。その後、若年層女性向けのマーケティング代理店に入社、ソーシャルゲーム企業の広報を経て、現職。最近はカメラと動画制作にはまる。
会社名 | 株式会社SHIBUYA109エンタテイメント |
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