シンデレラテクノロジーを研究
フリュー株式会社で広報を務める
「SHIBUYA109lab.」で所長を務める
まず、17名のゲストが学生時代にプリを撮る際、「盛り」と「遊び」の要素をどのくらい重視していたか、分類。
分布図をみると、どの世代にも、時代に流されず「盛り」を重視する人たちがいることが分かりますね!
確かに「盛り」を重視している5人(※青枠)は、メイクやファッション、見た目に対してのこだわりが強く、とても研究熱心という印象があります。
「盛り」重視の5人以外を見ると、1つの流れが描けて興味深いです。
実際に発売された機種を見ても、2004年くらいまでは「遊び」重視、2006年くらいから、“デカ目機能”が標準搭載されるなど「盛り」を重視する傾向が強くなりました。直近ではフリューでも思い出を楽しく記録できるような「遊び」要素を入れたプリ機を発売して人気を獲得していますから、赤矢印の流れは、まさにプリ機の市場トレンドと一致します!
2000年〜2005年に高校生だった久田見さんや高尾さんは「遊び」に振り切っていますが、その時代に「盛り」が流行っていたら「盛り」を重視していたかもしれませんね!
どのようなプリ帳を作っていたか、という目線で見ていくと、年代ごとに同じタイプになりますね!
プリが誕生してからしばらくは、プリ帳にぎっしりプリを貼るのがステータスとされていた時代。2005年頃からノートにプリや写真、雑誌の切り抜きなどを「コラージュ」するタイプへ、そして2007年頃からは、プリ帳は作らず缶や箱、袋に保管するように変わっていきます。
プリ帳“廃れ”の原因については第9回の時に『プリを「切らないでOK」な仕様に変更したのも一つの要因』と分析しましたが、2005年の「ぎっしり」から「コラージュ」は何が原因だったのでしょうか。
気になりますね!今回はその背景を詳しく考えてみましょう!
■原因①:プリの形が多様化
もともとプリは16分割や固定されたサイズだったので、簡単にぎっしり敷き詰めることができたのですが、プリ自体の形が多様化するにつれて、プリ帳に隙間ができてしまうように…。その隙間を埋めるため、ペンで何かを書いたりコラージュするようになったということが考えられます。
確かに色々な形やサイズが登場していましたよね!
フリューでは1998年からプリの分割数が選べるようになり、好みに合わせて4分割や8分割などが選べたり、大人数だとめちゃくちゃ小さく印刷される32分割が選べたりと時代に合わせて変化していきました。最近ではお気に入りの1ショットをチェキ風に大きく印刷する分割も人気です。
■原因②:デジカメの普及
長田さんはまさに「コラージュ」世代ですよね!何故コラージュをしていたのですか?
当時デジカメが流行っていたんですけど、デジカメで撮った写真を毎日の様にプリントアウトして、私はそれをプリ帳に貼っていました。(【シンデレラテクノロジー研究者×フリュー×SHIBUYA109 lab.連載企画】プリ帳HISTORY 第13回)
なるほど。そうしたら2005年頃に今と同じくらい高解像度のインクジェットプリンターが発売したことや、街の写真屋さんが生き残りをかけてデジタルプリントサービスに移行したことなど、印刷の進歩もプリ帳が「コラージュ」化した原因の一つかもしれませんね!
■原因③:文房具ブーム
あと、1990年代世代のブームとしてよく紹介されるのが、文房具ブーム。マーブルペンや香りがするペンなど、とにかくペンの種類が多かったのを覚えています。それもプリ帳がコラージュ化した理由の一つかもしれません!
なるほど!このころはプリでもペンで落書きする需要が高まっていたように思います。2003年発売の『天才カメラマン』というプリ機にはなんと250種類のペンが搭載されていました。今でもファンの多い「カクぷにょペン」など、プリならではのペンが色々登場した時代ですね。
携帯など「デコル文化」が流行ったのも、この頃ですよね。何かを手作りするというのが流行ったという点から見ても、コラージュが流行ったというのが分かる気がします!
はい、雑誌でもコラージュ特集などよくやっていました!
■原因④:デジタル化に反発!?
コラージュ世代は「ホームページ世代」でもあるんですよ。いろいろなものがデジタル化していった時代。その狭間で“反発”していたということもあるのかも…!?
デジタルを意識しながら紙でいろいろ編集をしているのがこの時代の特徴ですよね。デジタルに反発…そういう葛藤はあったかもしれません(笑)!
やはりこの時期はいろいろなものが過渡期。Instagramのように写真自体の見え方を美しくするという時代ではなく、素材を集めて編集しWEBページ全体を可愛くするとか、そういう時代ではありますよね。
いろいろなことを達成しようとしている世代だったのですね。
※サービスは女子高生など若者に流行した年代で表記
プリ帳が作られなくなり始めた2007年頃は、ブログやmixiなどのSNSが盛り上がっている時期ですね。
フリューでは、2003年に発売した『スタパラショット キラキラバージョン』からプリ画のダウンロードサービスを始めて、2005年に現状とほとんど同じ仕様である1回のプレイで2人が1枚ずつ無料画像をダウンロードできる仕様になっています。
そもそも、何のためにプリを送れるようにしたのか気になりますね。ブログが流行ってきたから送れるようにフリューさんが仕掛けたのか、ブログをやっている人たちが画像として欲しくて要望があって送れるようにしたのか。
ガラケーが普及することで、ブログやSNSが身近なものになり、そこに“プリ画を使用したい”と画像に対する需要が増えたので、フリューとしても画像取得サービスを開始しました。
あと大きな転換点は、2009年。LTEサービスの開始で携帯電話の回線が速くなり、たくさん画像が貼られたWEBページを、携帯電話でさくさく見られるようになりました。このことが、プリをデジタルで見せるようになった要因かもしれません!
【補足】プリで3G回線を利用した画像転送を行うようになったのは2010年7iRO Co.から
プリ帳を作る人が減ったのは、プリを切らなくていいようになったのも大きな原因ですが、久保先生がおっしゃった通信設備が整ったこともかなり影響していそうですね。
そうですね、プリ画はSNSのトップ画やブログなど“自分を発信する場所”で重宝されました。特にトップ画には写真よりも“適度に盛れてる”プリを使うのが流行りましたね。さらに、「ブログ」がブームになり女の子がこぞってコーデ写真をアップしはじめると、つま先から頭の先までのコーデを残せるように全身撮影ができる機種を発売(2010年『Lumi』)するなど、メーカーからも“SNSでのプリ活用”を後押しするような流れもあったように思います。
実は、97年にプリで撮った写真をホームページにアップロードしますというサービスがありましたけど、当時は誰も使っていませんでしたね。まだ携帯電話も普及していない時代だったので…。
時代の先をいっていたのですね。いくら便利な機能が出ても、その時代とマッチしないと流行らないですもんね。
↑2000年代の「遊び」プリ
↑2019年の「遊び」プリ
最近またプリに「遊び」の要素が入ってきていますよね!
昔の「遊び」は2枚のプリで作る“つなぎプリ”や、落書きで空いた場所に手紙を書く“手紙プリ”、プリ自体にもうんていが付いていたり、風が吹いたり、撮っている時の「遊び」の要素が入っているものなどありましたね。
プリにおける「遊び」つまり“プリって楽しい”と感じてもらうポイントは、昔と今では少しニュアンスが変わってきたように思います。今は撮影する瞬間だけでなく、撮影後も“楽しかった”と思い返していただけるような機能が搭載されているのが特徴かもしません。例えば、広い撮影空間や動かせるカメラを使って様々なポーズ・画角に挑戦できる『#アオハル』は、遠近法撮影や自撮り風の撮影など撮っている瞬間も楽しいですが、シールを見返したときにその瞬間の“ノリ”を思い返して楽しめるのも魅力です。
確かに!SNSでも、プリの他に、撮影ブース内での様子を撮影した動画を投稿している子も沢山見られますよね。
スマホ用の台を撮影ブースに設置して、撮影中の様子を動画撮影できるようにした「ムービースポット」(2018年発売『トキメキルール』)や、SNS映えする半透明素材の「透けちゃうシール」(2018年発売『SUU.』)もある意味プリの新しい遊び方を提案する機能かなと思います。
なぜフリューさんは「遊び」の要素を入れるようになったのですか?
“プリ=盛れる”が当たり前になりつつある中で、“盛れる写り”の仕上がりはもちろんですが、撮影そのものをより楽しんでもらいたいという思いを込めて機種ごとにプリの新しい楽しみ方(遊び要素)を提案しています。これからも年齢問わず、幅広い方々に楽しんでいただけるようなプリを開発し、“プリ文化”がずっと続いていくようにしたいですね!
東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。
専門学校を卒業後、2017年新卒としてフリュー株式会社に入社。広報として、プリに関する最新情報や魅力を発信中。
好きなものは、旅行、焼肉、ドライブ。
今年の目標は、仕事もプライベートも新しいことに挑戦すること。
総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。
会社名 | 株式会社SHIBUYA109エンタテイメント |
---|---|
TEL | 03-3477-6719 |
FAX | 03-3477-6702 |
本社所在地 | 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1丁目10番7号 五島育英会ビル4階 |