SHIBUYA109 lab.

SHIBUYA109 lab.変遷レポート
レトロカルチャー編

2025年現在、Y2Kやレトロ喫茶など、様々なレトロカルチャーがトレンドとして注目されています。過去に流行したファッションスタイルやカルチャーが再度注目されるのは、これが初めてではありません。一方で、レトロカルチャーの楽しみ方は進化を続けています。
SHIBUYA109 lab.では、若者の価値観や消費行動を調査する中で、現代ならではのレトロカルチャーの楽しみ方を多数観測してきました。
今回の変遷レポートでは、その現代ならではのレトロカルチャーの楽しみ方や特徴をお伝えします。

SHIBUYA109 lab.変遷レポート レトロカルチャー編

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INDEX 目次

1 ビジュアルで拡散され、体験として楽しまれる
「エモい」フォーマット

レトロカルチャーに関連するトレンド

2022年にはSHIBUYA109lab. トレンド大賞2022で『Y2K(2000年代初期のファッションやカルチャー)』が7位にランクインし、以降2024年現在も楽しまれていますが、2019年フード部門に『レトロ喫茶』、2022年に『バナナスプリット』や『町中華/ガチ中華』、2021年体験部門に『西武園ゆうえんち』がそれぞれノミネート入りしていることから、Y2Kブーム以前から昭和・大正のカルチャーにまつわる体験が楽しまれていたことがわかります。

現代ならではのレトロカルチャーの楽しみ方として、SNSの影響は無視できません。
昭和カルチャーとしては、純喫茶で楽しめるメニュー(クリームソーダ・固めプリンなど)だけではなく、店内の空間も含めて楽しまれており、モノからコトへ楽しむ対象が移り変わっていることが見てとれます。また、近年は「おばあちゃんの味」「レコードカフェ」など、レトロカルチャーを「体験」することが流行する傾向にあり、これらはこれまでお伝えしてきていた『映えの変遷』にも重なっています。
レトロカルチャーの楽しみ方も、普段から触れているメディア環境からも大きく影響を受けていることが考えられます。

関連して、画像や動画で表現するSNSでの発信が当たり前になった結果、レトロカルチャーから得られる印象はビジュアルで理解されていることがわかっています。
これは、SHIBUYA109 lab.がこれまで伝えてきた「ビジュアルコミュニケーション力」によるものです。例えば「エモい」という感覚については、「懐かしい感じ」などの言葉で理解しているのではなく「ザラザラ感」「暗め」などビジュアルで雰囲気を感じていることがグループインタビューなどからわかっています。そして、この「ザラザラ感」「暗め」などを再現するカメラフィルターやデジタルカメラもトレンドとして楽しまれています。

“エモい”を実現する構成要素を無意識に読み取り再現できる

また、2024年現在トレンドになっている「レコードカフェ」や「デジタルカメラ」は、レコードプレイヤーにセットする、画像データをダウンロードするなど、手間がかかり、不便なアイテムとも言えます。しかし、『体験消費』が盛り上がっている現代には、この手間こそが「体験」として楽しまれているのです。

現代のレトロブームは、SNSでシェアできるフォーマットとして拡散し、昔を「体験」することが面白がられているといえるでしょう。

2 ファッションでもレトロが大流行!
実は少しずつ変化している「Y2K」

一方で『Y2K』と呼ばれるジャンルの中で、年を追うごとに細かいトレンドが移り変わっています。
SHIBUYA109 lab. トレンド大賞で振り返ると、2019年ごろから90s~00sファッションが流行し、その後2022年に『Y2K』という言葉がトレンド大賞にランクイン、その後もY2Kファッションアイテムがトレンドになり続けています。

しかし、Y2Kの中でもフォーカスされるトレンドは少しずつ移り変わっています。
2022年には海外セレブを中心とした、欧米の2000年代初期を表現するファッションが流行していたのに対し、2023年は2000年代初期の日本でトレンドとなった原宿文化や、平成女児(平成初期の女児)が楽しんだ玩具やゲーム、ブランドを取り入れたファッションが流行、2024年はさらに、2000年代初期の日本のサブカルチャーの影響を受けた個性の強いファッションが人気になっています。

ファッショントレンド:Y2Kトレンドの変遷

また、Y2Kブームはファッションにとどまらず、SHIBUYA109 lab.トレンド大賞には「たまごっち(2024年 コンテンツ部門 第1位)」「ギャルピース(2022年 ポーズ部門 第1位)」「パラパラ(2023年 SNSコンテンツ部門 ノミネート)」などが挙がっており、様々な形でY2Kの世界観を体験することがトレンドになっていることがわかります。

3 コンテンツは80s~00sまで幅広く流行。
体験は「手間」こそ楽しさ

コンテンツにおいても、過去の作品が再度楽しまれている事例が複数見られます。SHIBUYA109 lab. トレンド大賞2024 コンテンツ部門では、「アニメ『NANA』」や「平成ドラマ視聴」がノミネートし、2023年体験部門では「オシャレ魔女 ラブ and ベリー」のコラボカフェが4位にランクイン。音楽においても、過去の楽曲が時代を超えたヒットが多数みられています。サブスクリプションサービスの普及により、過去の作品にアクセスできる環境や、引用したこれらのコンテンツをBGMやミームとして再解釈して拡散されていく仕組みが、リバイバルブームを随時生み出していると考えられます。

また、「80~90年代アーティスト(SHIBUYA109 lab.トレンド予測2023 アーティスト部門」への憧れは、ファッションや楽曲にとどまらず、そのエネルギッシュなマインドにも及んでいるようです。

4 「昭和カルチャー」「Y2K」は
もはやブームではなく、ジャンル

レトロカルチャートレンドの盛り上がり

また、レトロカルチャーをトレンドとして捉えるうえで理解しておきたいのは、昔のカルチャーがリバイバルされて楽しまれているここ数年の現象はもはや、ブームではなく定着し、 “ジャンル化” された、と考えるほうが適切だということです。

現代の若者は、複数のファッションジャンルや界隈(SNS上で同じ興味関心をもつ人たちを中心に形成されるゆるい集団)も、同時に楽しむ傾向があります。レトロカルチャーも『昭和カルチャー』のトレンドが終息した後に『Y2K』が流行ったのではなく、2025年現在『昭和カルチャー』も『Y2K』も並行して楽しまれていて、若者たちがその日・その場所によって、体験する時代・テイストを変えながら楽しんでいる様子が見られています。

昭和カルチャーもY2Kも毎年トレンドとして観測されており、そのため、一過性のトレンドではなく『フレンチガーリー』『居酒屋フード』のように、もはや定常的に楽しまれるジャンルになっていると考えられます。

若者がレトロカルチャーに注目する背景

共有したくなるレトロカルチャーの世界観 例

そして、SNSの普及により生活は便利になる一方、触れているデザインの均質化や、オンラインでのゆるいつながりに、若者が慣れ、一種の退屈感を感じてしまっている側面があります。そういった世界観を生きる若者世代にとって、レトロカルチャーの「独自の確立した世界観がある」「均質化されすぎず、洗練されすぎていない」ところや、「リアルな手触り感のある体験」という特徴が新鮮に映り、今新しく生み出されるものとは異なる刺激的なものとして、楽しみ続けられていると考えられます。
現代ならではのレトロカルチャーの楽しみ方や特徴には、SNS・デジタルの世界にはない「リアルさ・質感」を求めている若者の心理が表れているのではないでしょうか。

会社概要

会社名 株式会社SHIBUYA109エンタテイメント
TEL 03-3477-6723
FAX 03-3496-1875
本社所在地 〒150-0043
東京都渋谷区道玄坂2丁目6番17号 渋東シネタワー14階

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