毎回ゲストを迎えて「プリ帳」から日本のガールズカルチャー史をひも解く連載企画“プリ帳ヒストリー”。
中学生の時に「派手仔」というファッションスタイルに出会い、アグコという名前で活動をしていた萌子さん・25歳。当時の活動内容やネット上でのやり取り、プリの楽しみ方など、派手仔のカルチャーについてお話を伺いました!
シンデレラテクノロジーを研究
フリュー株式会社『GIRLS’TREND 研究所』で所長を務める
「SHIBUYA109lab.」で所長を務める
派手仔(はでこ)とは・・・レインボーカラー(原色)のボリュームある洋服を身にまとい、ボンバーウィッグ、もしくはストレートウィッグをかぶる原宿系のファッションジャンル。
なぜ派手仔ファッションをするようになったのですか?
中2のとき、バンギャの親友の影響で一度V系になったんですけど、ネットで派手仔というジャンルを見つけて「コレをやりたい!」と、ジャンルを変えました。
参考にしていたものは何でしたか?
めっちゃオシャレでWEBサイトもすごく人気なアサチョさんに憧れていました。雑誌は「KERA」を読んでいたのですが、派手仔だけの雑誌ではないので、前略プロフィールやブログを見て、色々な人のコーデを参考にしていました。
私派手仔の仲間とは、どういう交流をしていたのですか?
派手仔は個人的な付き合いがメインだったのですが、「ピンカー☆バニー(読み:ピンカースターバニー)」という15人くらいメンバーがいる派手仔のサークルに入っていました。1〜2ヶ月に1度召集があって、原宿で写真を撮ったり、料理教室をしたり!
料理教室!?
はい。いなり寿司を作った時もありました(笑)。
(左:萌子として撮影したプリ/右:アグコとして撮影したプリ ※前後のページ)
派手仔ファッションをするようになってからは、常にそのスタイルだったのですか?
いえ、学校の友達と一緒にいる時は普通の格好で本名の「萌子」、派手仔ファッションの時は活動名「アグコ」という形で使い分けていました。
確かにプリ帳の中に、2つのタイプが混在していますよね!
高校くらいになると、萌子とアグコがブレンドされて差がなくなっていった感じです。派手仔のファッションはカラフルなので、すごくテンション上がるんですよ!
そこはギャルと似ていますね!
高校生の時は「小悪魔ageha」とかも買って研究していましたよ!派手仔のメイクは、つけま+濃いめのチーク+そばかすシールが鉄板。つけまつ毛もカラコンも当時はしていたのですが、今は、マスカラを塗りまくった“ひじきまつげ”+裸眼が可愛い!って、仲間の間で言っています。
なるほど!萌子さんは、洋服を作ることもありましたか?
高校生の時に「moc.」というファッション団体に入っていて、ファッションショーの服を作ることも。その時は、週1〜2で原宿に行っていましたね。
原宿では、どこに集まるんですか?
竹下通りのロッテリアです。「竹下ロッテ集合!」って(笑)。
ギャルは「センター街のファッキン集合!」なので、それぞれ聖地はあるのですね。
あと、代々木公園!ファッションショーのウォーキングの練習をして、その帰りに竹下のJOLでタピオカ飲むのが鉄板コースでした。
学生時代はちょうど、ガラ携を使ったインターネットでの発信がさかんになった頃ですが、ホームページやブログなどをやっていましたか?
前略プロフィール(プロフィール用)とWeb日記サービス「Alfoo」(リアルタイム用)、CROOZ blog(ブログ用)、ウェブサイト(全てをまとめる用)…色々やっていました。
ネットでの交流はどのようにしていましたか?
私たちの場合、ウェブサイトにあるBBSにコーデを貼るんです。オシャレで絡みたいと思った人には、「私こんなコーデしてます!」って。それで気に入ってもらえたら話が続く、という感じで交流をしていました。
雑誌の撮影とかミーティングとか、リアルな場で活動しているイメージがありましたが、ネット上でも結構活動されていたのですね!
はい。雑誌は私が載る場所、ステージでしたね。まず「KERAマニアックス」に載って、その次に月刊誌の「KERA」に載るという。
「ネット→KERAマニ→KERA」というピラミッドのような段階が面白い!
プリ帳がとっても華やか!ランキングなどもあって興味深いです。人に見せる目的で作っていましたか?
プリ帳は、たまに友達に「こんな感じで貼ったよー」と見せてはいましたが、日記のような立ち位置でした。
人に見せるというモチベーションではなくレベルの高いプリ帳を作っていたのが、すごいです!
私が気になったのは「仲仔」「一生ともだち」「友情不滅」「友達歴〇年」「我等友情」など…友情を表す言葉の落書きが多いこと。プリの目的は友情を記録することでしたか?
はい。“遊んで撮る”というより“撮るために遊ぶ”、プリの比重は結構大きかったですね。小学生のときは、ジャングルジムが付いている機種だったり風が出る機種だったり、あとはフレームや変顔で遊んでいました。
まさに、萌子さんの小学生時代(1999~2005年)はカメラが動かせたり、テーマでの撮影があったり、椅子がついていたり、風が吹いたりと、遊びが重視されていた時代ですね。また、プリを撮る理由として「友達と一緒に撮影・落書きなどを楽しむため」をあげる人は36%います。特に、小中学生はプリを撮ること自体を「遊び」ととらえている女の子が多いと感じています。
そのあと、ショッピングが遊ぶ一番の目的になったのですが、その中でプリを撮るというのはマストでした。
ショッピングはどこへ行っていたのですか?
池袋のサンシャインシティや原宿です。SHIBUYA109の「JSG」にも行っていました。高校の時は、プリの目的は、盛るためと全身コーデを残すために変わりました。
まさに、高校生になると、遊びのひとつでありつつも、セットとして必須なもの、理由としては「盛れる」から、というのが一般的にも多いと分析しています。
派手仔の方たちのお気に入りのプリ機は何でしたか?
断然「Lumi」!他の機種だと色が淡くなってしまうので…。やっぱりパキっと色が出る「Lumi」がお気に入りでした。
それでいうと最近は、全身撮影もあって服の色味もしっかりと出る「#アオハル」が派手子の方におすすめかもしれません!
そう!最近「#アオハル」撮ってテンション上がりました!お気に入りです♪
プリの落書きでのこだわりはありましたか?
小6〜中2に『nicola』を読んでいたので、友情系の言葉を書いていたのもその影響かもしれません。字体も、『nicola』で学んだ流行文字。ノーマルのペンで書いたものをさらに縁取る落書きが好きでした。あと、カクカクのペン!
カクぷにょ!私も前回話しましたが、大好きでした(笑)!
他によくやっていたのは、ピンプリに友達からメッセージを書いてもらうというもの。「アグコはマジでいつも元気で最高のSister!」みたいな感じに書き合うんです。
色彩センスはどこで磨いたのですか?
派手仔をやるようになってから培われていきました。最初は全然ダメで…。友達も上手だったので、切磋琢磨していきました(笑)。
プリ帳を見る限り、結構最初からカラフルで、色の組み合わせがお上手だと思います!2色を使ってカラフルに、くらいならみんなよくやるんですけど、たくさんの色を使っているのにまとまっていてお見事です!
本当ですか!? 嬉しい!
ファッションなど落ち着き気味の最近の若者について、どう思いますか?
流行りが好き!と世の中に流されるよりも、これがこうだから好き!というという風に、もっと意志を持った方が楽しいんじゃないかなって思います。周りの目も気にする人も多いですし…。
多様化が進んでいる時代でもあるので、「自分は好きなものを選んでいる」という認識の女の子は多いと思います。ただ、その選択肢が、ある程度のボリュームがある、流行っているジャンルの中からになっていて、もっと他にないか、自分らしさや独自性をとことん探求しようとする子が少ないのかもしれません。
情報を与えられすぎなのかもしれないですね。
「女性だからこうしなければいけない」などというのは実は違くて、色々選べるんだよというのを私は伝えていきたいです。まずはボディポジティブやセルフラブをして欲しいなって思います。
プリについて、今の若者に伝えたいことってありますか?
今のプリって、すごく盛れているじゃないですか。将来振り返った時に、“自分でない自分”だけが残っているのもどうだろうと思うので、“ありのままの自分”も楽しんだり何かで残したりしたらいいのでは、と思います!
派手仔の方は、その後も派手仔を貫いているのですか?
先輩の代は「卒業!」と宣言し、使ってた服やヅラ(ウィッグ)などをWEBサイトで販売している人が多かったです。同世代で「卒業!」と宣言してる人は見ていませんが、系統が変わっていった人が多い印象。私は “派手仔を卒業する”という概念はなく、これからも着たい時に着ようと思っています!
取材・文/高尾ひとみ
2005年入社以来、プリントシール機の商品企画に携わる。現在はマネージメントも行う。
趣味は、美味しいもの、漫画、カラオケ、ホットヨガ、ダイビング、脱出ゲーム。なんでも記録するログ癖あり。
今年の目標は、社内の仕組みを整える、社外の方とたくさんお話する、家をキレイに保つこと!
東京大学大学院博士課程修了(環境学博士)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員など歴任。著書に『「盛り」の誕生―女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』(太田出版、2019)。
好きなものは、ビール、羊羹、芸能ニュース。
今年の目標は、昨年に引き続き、昭和初期を知るおばあちゃんたちとたくさん会うこと。
総合マーケティング会社を経て、SHIBUYA109のマーケティング担当となる。
毎月200人のaround20(15歳〜24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。
今年の目標はSHIBUYA109 lab.所長として若者に関する講演に講師として登壇すること。そして「大人っぽさ」と「透明感」を兼ね備えた女性になること。
アーティストa.k.a.英語講師。Self-expression(自己表現)をテーマにファッションスタイリング、モデル、抽象画、イラスト、zineなど様々に活動中。Queerやフェミニズム、精神世界など、関心事は幅広い。英語講師として1年半正社員として勤めていたが向いていないことに気付き、2019年6月満を持して辞職、フリーランスで英会話を教え始める。趣味はモノマネ。最近はNetflixのRu Paul's Drag Raceのクィーン達を見てアメリカンゲイアクセントを習得。
Instagram : @llugkoll(ファッション) @denmoeko(アート)
Twitter : @24G3
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