私たちSHIBUYA109 lab.は、2018年より15-24歳(around20)の若者を対象に、様々なテーマで定量・定性調査分析を行ってまいりました。
「SHIBUYA109 lab.変遷レポート」では、これまでの調査結果を改めて再編集し、若者の消費の変遷としてお伝えいたします。
今回のテーマは「体験」。若者の消費行動を理解するうえで重要な「体験」について解説し、時代とともに変化してきたトレンドについてご紹介します。
SHIBUYA109 lab. では、若者消費キーワードとして、下図の4つのワードをあげてきました。「体験消費」はその一つです。若者世代は “モノ” よりも、SNSなどで共有できる “コト” に価値を感じていることが様々な調査からわかっています。体験重視の消費行動は、様々なカテゴリの消費で生まれています。例えば、食では、フードそのものだけではなくフードがある空間の世界観もセットで楽しまれています。食だけでなく、ファッション、エンタメ、美容、ハイブランドなど、様々なブランドがその世界観を”体験”できるポップアップイベントを開催していることなどからも感じられるでしょう。消費行動を促すうえで“体験”させることは欠かせなくなってきているのです。
SHIBUYA109 lab. のトレンド大賞でも、2021年から体験部門を設置し、毎年若者の中でどのような体験がトレンドになったかを観察しています。
さらに、その知見を活かし、SHIBUYA109館内・外で若者から注目を集める体験を設計してきました。
若者にとって体験が重要視されているからこそ、「体験」という言葉が持つ意味は拡張しています。例えば、外出してカフェやポップアップストアを体験しようとする場合、 “他の人がどういった体験を発信しているか調べる(発見)” “体験のために必要な情報を集める(準備)” “実際に体験する(実体験)” “体験した内容をSNSで発信する(SNS投稿)” すべてが「体験」となり、若者に楽しまれているのです。
ただし、ここで注意したいのが、「映え」と「体験」の関係です。「映え」は「体験」に内包されたもので、「体験」の一部を画像や動画で切り取ることで「映え」は生まれ、「体験」は「映え」だけでなく「映えを叶えるための一連の行動」も含まれています。
近年、特に増えたポップアップの事例からも分かる通り、若者世代に楽しんでもらうには、まずはその空間に行く事を楽しめる体験を設計すべきであり、その体験を拡散してもらうための手段として「映える」空間やフードメニューを準備する必要があるのです。
体験におけるトレンドの変遷を大きく分けて考えてみると、コロナ禍の影響によって3つのトレンドに分けることができます。
■コロナ禍前:2017年-2020年
「インスタ映え」という言葉が2017年に「現代用語の基礎知識」選ユーキャン新語・流行語大賞に選ばれ、インスタ映えのための壁や空間(ブランコなどが置かれているなどフォトスポットになっている)が飲食店や企業のプロモーションイベントに設置されるようになり、欠かせないものになりました。「映え」を作ることが新たな「体験」として主に楽しまれていたと考えられます。
■コロナ禍:2020年-2023年
コロナ禍と言える2020年〜2023年は、おうちで楽しむ体験が充実しました。おうちカフェなど、おうちでお菓子やヲタ活グッズを “手作りすることを楽しむ” という体験や、MBTI診断、骨格診断などの診断コンテンツで自分を知る体験も盛り上がりを見せていました。
詳しくはこちら:
https://shibuya109lab.jp/article/220712.html
■コロナ後(2023年-)
そして生活へのコロナの影響がおさまりつつあった2023年以降は、『ジブリパーク』や『友だちがやってるカフェ』など、世界観に没入するコンテンツが多数生まれ、これまでより一層体験を重視し、リッチな体験を提供するエンタメが増えてきています。
変遷レポートフード編 でもお伝えしましたが、多くの体験は今や「再現」されることによって、拡散されていきます。若者は、SNSで気になる体験をストックし、友人とコミュニケーションしながら自分たちでその体験を再現する方法を探り、実際に体験を自分なりに「再現」、そしてSNSで投稿する、という楽しみ方をしています。
あらゆる体験は、SNSに掲載されている写真や動画を再現することを逆算して消費されていくのです。
そのため、SNSで体験の認知を広めたいならば、「再現」されることを逆算した仕掛けが必要になっています。それは「映える」空間づくりはもちろんのこと、再現したくなる仕組みとして、「アレンジしたくなる=自分語りしたくなる」余白も必要です。再現消費を意識するにあたって忘れてはいけないのは、100%の再現を競って消費しているわけではないこと。あくまで、SNSに投稿されたフォーマット(場所・画角・アイテム)を踏襲しながら、そこに自分たちだけの工夫やオリジナルな部分をつくりたい、再現における「アレンジの余白」も必要とされています。
さらに、ストレスなく体験を再現してもらうために、企業はネタバレを恐れずに積極的に情報開示することが大切です。再現することを楽しむ若者にとって、体験のブラックボックス化や想定外はストレスでしかありません。真似したくなるフォーマットだけでなく、営業時間や場所、該当メニューの提供時期などをSNSで開示しておく必要があります。
最後に、SHIBUYA109 lab.では体験と消費の関係についても調査しています。トレンド変遷レポート フード編では、「食を楽しむには空間も大切だ」と考える若者世代についてお伝えしましたが、フード以外の様々な領域でも、消費行動に「体験」は欠かせないものとなっています。
様々な情報が溢れ、リコメンド等によって自分専用にカスタマイズされた大量の情報を受動的に受け取っている現代の若者は、とある商品の情報について「認知するための情報」「興味をひく情報」「購入を検討するための情報」をオンライン・オフライン関係なく、ランダムに摂取・体験しています。
例えば、とあるお菓子を例にすると、SNSで他商品と比較検討する動画を見ていて、コンビニの棚で新商品を見て「どこかの動画で見た」と思い出し、友だちの口コミを聞いて興味を抱く…というように、その商品に関する体験に何度も出会い、その経験を積み重ねることで、購入に至るのです。
それは、過去に購買行動が「直線型」で説明されていたことに対して「回遊型」の購買行動と言えるでしょう。大量の体験を回遊し、ある日消費に至る、というのが現代の若者の購買行動だと考えられます。
様々なカテゴリの「体験」を重ねることがいつか消費につながるといった点では、日々大量に消費される体験の中で埋もれることの無いように、オンライン・オフライン両方で接点をつくり、印象を積み重ねていく必要があります。
※SHIBUYA109 lab.では「ファッション」、「コスメ」、「食」の事例に分け、この「体験」と「消費」の関係を調査いたしました。
詳しくは有料レポートをご覧ください。
「定量_体験・食・コスメ_【販売用】「体験」から紐解くZ世代の購買実態調査レポート」
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