私たちSHIBUYA109 lab.は、2018年より15-24歳の若者を対象に、様々なテーマで定量・定性調査分析を行ってまいりました。
「SHIBUYA109 lab.変遷レポート」では、これまでの調査結果を改めて再編集し、若者の消費の変遷を公開いたします。
2018年より毎年発表している『SHIBUYA109 lab.トレンド大賞。各年の結果を基に、若者のトレンドの変遷を振り返ります。※2018年は部門が異なるため、画像には記載なし
2020年から5年間、コスメにおいては明るく彩るメイクよりも、「リアルさ(素肌の美しさ)」や「ナチュラルさ」が表現できるアイテムがトレンドに入っています。
コスメ・スキンケア部門を振り返ると、2019年には『innisfree ノーセバムミネラルパウダー』が部門第3位に。こちらは「韓国の国民パウダー」「すっぴんパウダー」と呼ばれるアイテムです。さらに、2020年部門第1位となった『rom&nd ZERO VELVET TINT』は、自然な発色と軽い着け心地がInstagramで話題となりました。また、香水についても、部門第2位の『SHIRO キンモクセイ オードパルファン』など、香水感が薄い、自然な香りが好まれる傾向にありました。
新型コロナウイルスの影響が大きかった2021年は、メイクで悩みをカバーするよりも、肌を綺麗にしたいというニーズの高まりをさらに感じる結果となりました。第1位には『ネーチャーリパブリック スージング&モイスチャー アロエベラ92%スージングジェル』、2位には『fino プレミアムタッチ 浸透美容液ヘアオイル』が入るなど、前年度の2020年度から、比較的価格帯の高いスキンケア商品がランクインしています。
2022年以降、コスメにおいては中国の影響も見られるようになりました。「純欲メイク(2022)」は中国発祥の「艶感のある大人っぽさと、少女のようなあどけなさを兼ね備えており、透明感・儚さが魅力」のメイク。また、「チークネイル(2023)」は「中国で、自爪に近いシアーカラーで仕上げる、シンプルだけど華やかなデザインが魅力の『ワンホンネイル』」です。
また、コロナ禍後の数年は、マスクを付けた生活が当たり前になったことも影響して、トレンドに「マスクより上」をケアするアイテムが多数ランクインしました。
2021年は、2位には『fino プレミアムタッチ 浸透美容液ヘアオイル』(ヘアケア)、3位に「セザンヌ 描くふたえアイライナー」(アイメイク)がランクイン。2022年は2位に「YOLU カームナイトリペアシャンプー」(ヘアケア)、3位に「SHEIN 部分つけまつげ(アイメイク)」。2023年には1位に「レイヤーカット」(ヘアスタイル)2位に「リファハートブラシ」(ヘアケア)が入るなど、目元・ヘアケアのアイテムが中心にランクインしています。
2023年には、「チークネイル(3位)」「落書きネイル(9位)」などネイルがランクインし始め、手元で写真を撮るためのネイルがトレンド入りする傾向も見られてきました。
SNSでコスメを紹介することが当たり前になるにつれて、コスメ・スキンケア領域では商品名とは別に「異名」がついてSNSで拡散する文化も生まれました。
異名文化について、若者からも、「キャッチーな名前のほうが特徴がわかりやすいし、覚えやすくて気になる」というコメントも聞かれています。
ファッションにおいてはここ5年間で「シンプルなスタイル↔Y2Kスタイル(約20年前のファッショントレンドを再解釈したもの)」のトレンドを行き来していることがわかります。
2018年には、「ウエストポーチ(1位)」や「チェック柄シャツ(3位)」など90年代ファッションがトレンド入り。当時のコメントにも「大人からすると懐かしさを感じるようなアイテムが登場。ただ、90年代のファッションをそのままコピーするのではなく、最新のファッショントレンドに90年代っぽさをミックス」と書かれており、90年代ファッションが流行していたことがわかります。
しかしその後、トレンドはシンプルなスタイルに移行。2019年のトレンド大賞のコメントには「今年は『消えそうな色コーデ(トレンド7位)』と言われるベージュを基調としたスタイルと、全身を同系色でそろえる『ワントーンコーデ』がトレンドとなっていたため、シンプルな服装に特徴的なアクセサリーや小物でアクセントをつける人が多くいました」 と記載。1位のトレンドである「セットアップコーデ」からもシンプルな服装が好まれるトレンドが感じられます。
この傾向は2020年まで続き、当時のトレンド大賞記事のコメントにも「昨年に引き続きシンプルなコーディネートに帽子やマスク、ヘアアレンジでアクセントをつけることがトレンドとなりました」と書かれています。実際に「バケットハット(2位)」「デザインマスク(4位)」などがランクインしていました。
2021年は、コロナ禍の影響がまだ残っており、外出の機会が減っていたことから1度の外出のためのコーディネートに気合が入った年といえます。シンプルなコーディネートの中に目を引くポイントを作る傾向が現れ始めます。「カラーパンツ(1位)」「たすき掛けコーデ(2位)」などがランクインしました。
その後2022年から、懐かしいスタイルが復活し始めます。トレンドに「Y2K(7位)」が入り、「アームカバー(1位)」「ルーズソックス(5位)」など過去に一度流行したアイテムもランクインしはじめました。そして、2023年にも「カーゴパンツ(1位)」「タトゥーシール(5位)」「ローライズ・ローウエストパンツ(11位)」など、懐かしいアイテムがランクイン。2024年のトレンドはまだ発表されていませんが、Y2Kブームはまだまだ続きそうです。
2010年代以降 “インフルエンサー” という言葉が普及し、SNSの投稿から人気を得たスターが多数生まれるようになりました。SHIBUYA109 lab.がトレンド大賞をはじめた2018年にはすでに、YouTuberやTikTokから生まれたスターが多数トレンドに選ばれています。
2018年にはkemioや東海オンエア、レペゼン地球がトレンド大賞に登場したほか、2019年にはよしあき&ミチ、ヴァンゆんチャンネル、なこなこちゃんねるが「ヒト」部門で3位までに入りました。2023年の「ヒト」部門の受賞は、ちょんまげ小僧(1位)、大谷翔平(2位)、やす子(3位)となり、SNS出身のスターとマスメディアを中心に活躍するスターが同時に並ぶようになってきています。
音楽においても、SNSでのバズは欠かせないものになりました。
2020年以降、「アーティスト部門」2位になった瑛人さんの「香水」をはじめ、2020年にリリースした楽曲が「首振りダンス」として人気を博し2023年にブレイクした新しい学校のリーダーズ(2023年「アーティスト」部門1位)さんなど、TikTokで楽曲が使用・拡散されることから、楽曲が広く知れるようになる事例も当たり前になってきています。
また、今や消費活動においてもインフルエンサーの存在感は大きくなっています。2022年の調査では、Z世代がSNSで情報収集する際、最も参考にするのはインフルエンサーの投稿となっています。(詳しくはこちら:https://shibuya109lab.jp/article/220118.html)
フードのトレンドにもSNSが大きく影響を及ぼしています。この5年間SNSで「映える」ことが、トレンドになる大きな要因の一つです。
2018年〜2019年のコロナ前には、「タピオカ(2018年1位、2019年殿堂入り)」「チーズドッグ(2018年1位)」「ロールアイス(2018年2位)」「いちごあめ(2019年3位)」など、片手で持てて持ち運べる「ワンハンド」メニューが上位を独占していました。友達と購入したフードを乾杯させたり、フードを持っている様子を首から下だけ映した構図で撮影したりしてSNSで投稿することが流行していました。
しかし、コロナの影響が大きくなり始めた2020年から数年、「おうち」で楽しむフードがトレンドを占めるようになります。2020年は「フルーツサンド(1位)」「トゥンカロン(2位)」「クリームソーダ(3位)」「センイルケーキ(5位)」がランクイン、2021年にも「マリトッツォ(1位)」「地球グミ(2位)」「かじるバターアイス(3位)」ランクインするなど、室内でフードを楽しむ様子がトレンド大賞にもあらわれていました。
コロナ禍における生活にも慣れ、感染対策をしつつ外出も楽しめるようになった2022年からは、「ドーナツ(2022年5位・ピクニックなどで楽しむ様子が見られました)」など、外でも中でも楽しめるフードがランクインするようになります。また、「カヌレ(2022年1位・無機質カフェ)」「バナナスプリット(2022年4位・アメリカンレトロ)」「夜カフェ(2023年3位)」など、世界観を演出するアイテムとしてのフードも人気になっています。
最後に、2022年以降は「JKケーキ(2022年2位)」「バナナスプリット(2022年4位)」「ライスペーパー(2023年2位)」など、手作りする過程を楽しむトレンドが複数ランクインしました。世界観ごとにフードを楽しむトレンドや、調理過程まで楽しむトレンドには、SNSに投稿できる動画の尺が長くなり、調理過程を紹介できるようになっていることなど、食の体験化が背景に存在していると考えられます。
これらのトレンドを見ていくと、コロナ禍と言われた2021年、2022年を除いて、フードトレンドでは継続的に「チーズ」を使ったフードがランクインしていることがわかります。
チーズアイテムは「とろっと伸びる」「ハイカロリー(罪悪感がある)」なことから画像や動画で映えることが大きな魅力だと考えられます。また、「低価格」で「ワンハンド」で食べられるものが多く、金額的にハードルが低く、ファストフード感覚で気軽にたべられて挑戦しやすいことがトレンドになる理由としてあげられるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスが生み出したトレンドの傾向としては「アレンジ」「手作り」が挙げられます。
2020年のトレンド大賞では、「おうち時間の過ごし方部門」「おうちカフェ部門」を設立。おうち時間の過ごし方では「おうちカフェ」が1位になったほか、おうちカフェ部門では、「ダルゴナコーヒー」「いちごあめ」「メロンクリームソーダ」などがベスト3となり、手作りを楽しむ様子が見られました。
・2021年:「サーティワンアイスデコレーション(5位)」
・2022年:「JKケーキ(2位)」「バナナスプリット(4位)」
・2023年:「ライスペーパー(2位)」
その後、フード部門では「アレンジ」「手作り」する余白のあるトレンドが入り続けており、これらの現象からも、フード部門で「体験化」が進んでいると考えられます。
コンテンツ領域では作品そのものを楽しむだけでなく、視聴者同士でコミュニケーションが生まれる参加型となっているという共通点が見られます。
2018年の『オオカミくんには騙されない(1位)』『恋する週末ホームステイ(2位)』など恋愛リアリティーショーは特に、感想や考察がSNSで拡散されることからトレンドに入り続けています。2019年には「オオカミちゃんには騙されない(3位)」もランクインしました。2019年には「あなたの番です(1位)」「3年A組-今から皆さんは、人質です(2位)」など、サスペンス要素を含んだドラマが考察コメントを生み出しトレンド入りしました。
LINEやインスタグラムを活用したドラマもトレンドになっています。「おっさんずラブ(2019年5位)」では登場人物のインスタグラムが、「恋はつづくよどこまでも(2020年3位)」では主演の佐藤健さんのLINEが話題になりました。
2020年以降になると、コンテンツの中のワンフレーズが爆発的に拡散する「ミーム」がトレンド入りする要因として現れ始めます。
『東京卍リベンジャーズ』の「ひよってる奴いる?」や、『呪術廻戦』の「お疲れサマンサ」、『SPY×FAMILY』の「アーニャ、ピーナッツが好き!」などといったワードを使って楽しく投稿するTikTok動画が拡散し、作品の認知度を大きく高めています。
キャラクターのトレンドを見てみると、2020年代に人気のキャラクターは、「ちいさくてかわいくてちょっとかわいそう」が共通点であることが分かります。
・2021年:『PUI PUIモルカー』(コンテンツ部門第7位)
・2022年:ちいかわ(コンテンツ部門第2位)、おぱんちゅうさぎ(コンテンツ部門第7位)
・2023年:んぽちゃむ(コンテンツ部門第3位)
これらのキャラクターは、ショートアニメーションやX上の漫画で人気を集め、そのストーリー内での「ちいさくてかわいくてちょっとかわいそう」な姿がSNS上で話題になり、多くの人に愛される流れにつながっています。
2010年代から日常生活の中でSNSを閲覧することが当たり前になったことから、あらゆる領域でのトレンドがSNSから生まれる傾向が高まっています。(2024年現在)
<例>
・コスメ:SNS映えするキーワードでコスメがバズる。「TikTok売れ」が発生。
→後日特集予定
・ファッション:SNSアカウントの世界観に合わせたファッションを着用
→後日特集予定
・フード:SNS映え(画像・動画)するフードがトレンドの主流に
→後日特集予定
・ヒト:SNS発のスター誕生&スターもSNSを活用するのが当たり前に
・コンテンツ:SNSで感想を投稿してもらうなど「参加型」の企画が定番化
2019年のトレンド大賞以降、様々なカテゴリにおいて、「昭和」「大正」「平成」など過去の時代のトレンドがリバイバルされ、楽しまれています。
→後日特集予定
ファッションでは2018年に「ウエストポーチ」や「チェック柄シャツ」など90年代ファッションがトレンド入り。その後、2022年には「Y2K」「アームカバー」、2023年には「カーゴパンツ」など、2000年代初頭のファッションがトレンド入りしています。
コンテンツに関しても、「ギャルピース(2022年・ポーズ部門1位。90年代に流行)」「おしゃれ魔女ラブandベリー(2023年・体験部門4位。2004年に登場したゲーム)」などがトレンド大賞で表彰されています。トレンド大賞上位には入らなくともノミネートされていたものには、に入ったもの以外にも、2021年には「西武園ゆうえんち(2021年・体験部門ノミネート。昭和レトロな世界観が魅力)」2024年には「たまごっち」(2023年・体験部門ノミネート。1996年に発売)」「アニメ『DEATHNOTE』(2023年・コンテンツ部門ノミネート。2006年に放送)」「デジタルカメラ(2023年・体験部門ノミネート。2000年代〜2010年代の“コンデジ”が流行。)が登場。これらのコンテンツはファッションや雑貨とコラボするなど、各所でレトロな世界観が注目されていました。
カフェ・グルメ部門においては、「クリームソーダ(2020年)」「フルーツサンド(2020年)」「バナナスプリット(2022年)」などを名物とするレトロ喫茶が注目されるようになりました。
SNSの影響により、トレンドの生まれ方は年々変化しています。
細分化多様化した膨大なトレンドの中から、「自分たちのコミュニティで楽しめること」もしくは「自分にぴったりなもの」を取捨選択して楽しんでいます。
コロナ禍の影響によりこの傾向は更に強まり、2022年以降は深く狭いコミュニティで熱量をもって楽しむ「界隈消費」が活発になっています。
また、近年のトレンドは “参加するもの” になっていることも押さえておきたいポイントです。
“「再現性があること」はZ世代のトレンドにおいて重要なポイントです。近年、Z世代のトレンドの中心にあるTikTok は、再現性のある体験を見つけるには最適なプラットフォームです。例えば、SHIBUYA109 lab.トレンド大賞のカフェ・グルメ部門にランクインした「地球グミ」は、包装を噛んで開けて食べる「食べ方」をマネすることが楽しまれました。(中略)
SNSで見つけたトレンドを再現することで、簡単に、コミュニティの一員であることを演出することができますし、共感を生むことができます。彼らが再現性を重視するのは、こういったコミュニケーションのコスパが高いことも理由の一つです。”(プレジデント社『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング(著:SHIBUYA109 lab.所長 長田麻衣)』より引用)
現代のSNS発信に関しては、ショート動画に使う音楽、ワード、構成などが決まっており、そのフォーマットに「参加」した上でオリジナリティを出すことが楽しまれているようです。
2023年トレンド大賞 ヒト部門で1位になったちょんまげ小僧も、多くの人が動画で引用した「ひき肉ポーズ」で話題になりました。2023年トレンド大賞で新設したSNSコンテンツ部門では「ひき肉ポーズ」「なぁぜなぁぜ?」「かわちぃ」など、いずれもSNSで使いやすいキーワードやフォーマットがランクインしています。
<コンテンツ部門のトレンド例>
・2020年:『鬼滅の刃』(煉獄さん「うまいっ」「心を燃やせ」)
・2021年:『東京卍リベンジャーズ』(ひよってるやついる?)、『呪術廻戦』(お疲れサマンサ)
・2022年:『SPY×FAMILY』(アーニャ、ピーナッツが好き!)、明日、私は誰かのカノジョ(ゆあてゃ)
・2023年:『推しの子』(『アイドル(楽曲)』)
また、コンテンツ部門でも「再現性」のあるミームが登場することがヒットの秘訣になっています。「ひよってる奴いる?」「お疲れサマンサ」といったようなワードや、『アイドル』などの音楽が引用され、マネされて広がっていくことで、多くの人の認知を獲得しています。
SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2018
https://shibuya109lab.jp/article/181113.html
SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2019
https://shibuya109lab.jp/article/191119.html
SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2020
https://shibuya109lab.jp/article/201110.html
SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2021
https://shibuya109lab.jp/article/211109.html
SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2022
https://shibuya109lab.jp/article/221108.html
SHIBUYA109 lab.トレンド大賞2023
https://shibuya109lab.jp/article/23110801.html
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